きょうと『現代の名工』作品展を開催!

きょうと『現代の名工』作品展の各作品を解説します。

作品展一覧
No.1 作品名「着物のパッチワーク・リフォーム」
作者 足立 ヨシ子 
No.8 作品名「小型磨き装置 ピン圧入治具 落下防止治具」
作者 篠原 滝太郎
No.2 作品名「真実の口」
作者 荒木 俊成
No.9 作品名「七宝電気炉 ポストⅢ型」
作者 橘 仁郎
No.3 作品名「愛をこめて」
作者 井上 敦子
No.10 作品名「ストラクチャードヘアスタイル」
作者 根津 英和
No.4 作品名「茶箱」
作者 井口 明
No.11作品名「 上和菓子 四季彩」
作者 將野 義雄
No.5 作品名「(しゃち)
作者 桶本 忠弘
No.12作品名「鏝絵(こてえ)
作者 林 正信
No.6 作品名「赤倭錦(あかやまとにしき)
作者 太田 保夫
No.13作品名「防災瓦葺の納まり」
作者 光本 大助
No.7 作品名「ファンシータキシード」
作者 齊藤 信幸
No.14作品名「越前和紙-京のサムライ」
作者 山口 昌行

№1 作品名「着物のパッチワーク・リフォーム」作者 足立 ヨシ子 

職種 和服仕立 (足立和装研究所 主宰)

受賞 平成20年度 京都府の現代の名工(京都府優秀技能者表彰受賞者) 
令和元年度 現代の名工(厚生労働大臣表彰受賞者) 

№1 作品名「着物のパッチワーク・リフォーム」作者 足立 ヨシ子

和裁全般に優れた技能を発揮する中で、着物として使っていたが羽織やコートにその形を変える古着の再利用において、羽織二枚から着物を仕立て上げるなど、どのような古着を利用して、どのように生まれ変わらせるかをその経験と技能により判断し、実践する事ができ、また、和裁の技能と洋装の知識を取り入れ、和洋双方の合う着物用コートを作るなど、自分の技能を活かし続けている技能者です。

あわせて、伝統的な良き衣文化としてだけでなく、さらに一歩進めて現代の生活に活き活きとした装いとして、新しい風を巻き起こすことが「きもの」に対する夢や心を育むと考え、自分の技能を活かし続けておられます。

 着物の再利用についても、羽織二枚から着物を仕立て上げたり、着物を羽織やコートに変えたりと、どのように生まれ変わらせるかをその経験と技能により、実践されています。

 今回の作品は、身丈と袖丈が短い着物に、同じ材質をパッチワーク式に足し布をして、身体の大きい人でも着用できるように、また、デザイン性も考慮して色無地から、より使いやすい付下風に、足し布を施してリフォームされています。

 和装学校の主宰として、積極的に後続の指導にあたって、高い技能を持った和裁士を育成しておられるほか、舞妓・芸妓の衣装など特殊な装束も仕立てています。

№2 作品名「真実の口」 作者 荒木 俊成

職種 建築塗装 (株式会社 ARACO 代表取締役)

受賞 平成21年度 京都府の現代の名工(京都府優秀技能者表彰受賞者) 
平成27年度 現代の名工(厚生労働大臣表彰受賞者) 

№2 作品名「真実の口」 作者 荒木 俊成

高い塗装技術で美術的な装飾を施すデコラティブ・ペインティングの分野には、大きく3つの種類があります。木目や大理石などを本物そっくりに描く疑似仕上げ(フォーフィニッシュ)、長年使いこんだかのようなアンティークな風合いを出すエージング仕上げ、そして美術的な表現で様々な演出を行うアート仕上げ。今回はそのアート仕上げのなかでも特殊とされる、トリックアートの技法で作品をつくりました。すぐにわからないと思いますが、実は発砲スチロールを組み上げたものに塗装をしています。このように、元の素材を別のもののように見せるというのもデコラティブ・ペイントの特徴であり、近年においては、あらゆる分野で必要とされる欠かせない技法となりつつあります。

 イベント会場で木目塗装を実演する様子

「35年ほど前にこの分野のことを知り、始めました。当時、デコラティブ・ペイントができる業者は関東に多くあったものの、関西にはほとんどありませんでした。手本になるものも少なく、高度な塗装技術が必要であるうえに、アート的なセンスも求められます」

 アートと言っても、時間をかけて仕上げる絵画などと違い、耐久性や安全性を踏まえた建材として施工していく職人の技になります。例えば、橋の欄干に木目を塗装する場合、人が触れたり雨風に晒されたりしても容易に剥がれない丈夫さを備えた塗料が求められます。絵を描くためのものではないため、乾きも早いという特性に注意しながら手早く確実に仕上げる必要があります。

 荒木氏は後継の育成にも尽力しています。高い技能を身につければ、それだけ付加価値の高い仕事に応じることもできる。若い人にはぜひとも、より高みを目指して挑戦してほしいと荒木氏は話します。

No.3 作品名「愛をこめて」 作者 井上 敦子

職種 洋菓子製造 (グラースセゾン洋菓子店)
受賞 平成24年度 京都府の現代の名工(京都府優秀技能者表彰受賞者) 

No.3 作品名「愛をこめて」 作者 井上 敦子

「私、チョコレートバカなんです」

 これから作品に使おうというチョコレートの型が所狭しと並ぶテーブルを前に、井上氏はそう言いました。フランス、スイス、ドイツ…。ヨーロッパの国々の名前が次々と出てきます。これらはほんの一部で、ヨーロッパに行くたびに手に入れた型が、別の部屋にごった返しているとか。なかでも金属製の型の精緻な細工の内面がきらきらする様子は、確かに欧州貴族の煌びやかさを思わせます。

さまざまな道具

20代で修行に入った老舗洋菓子店の計らいで、スイスにあるリッチモンド製菓学校に1年間学ぶこととなりました。大きな一枚板のチョコレートを切ることから一日は始まり、それはかなりの力仕事だったと言います。様々な国から生徒が集まっていましたが、用語を中心に必要な会話にはさほど困らなかったそうです。そこでの厳しさには男も女もありませんでした。しかし、持ち前の負けず嫌いが幸いしたのでしょうか。大きなつまずきもなく、有意義な経験だったと振り返ります。

努力が実を結び、女性では日本で初めての菓子職種の国家資格1級技能士を取得し、その豊富な経験を生かして、京都府菓子訓練校では設立以来、後続の指導にあたっておられます。

 「型を使うのは、簡単そうに見えて実はとても難しい。温度調整を少しでも間違うと艶やかなチョコレートにならない。チョコレートの温度、部屋の温度、さらに「作り手の気持ち」の3つが揃ってないと、うまくいかないように思います」

 井上氏はヨーロッパ仕込みの包装(ラッピング)技術にも力を入れています。ただ作るだけではなく、お客様が受け取ってどう感じてくれるのかを想像しながら、商品を手渡すその瞬間まで手間を惜しまないスタイルを、これからも続けるとのことです。

今回は、開催日にあわせて、バレンタインをイメージしたチョコレートのデコレーションをしていただきました。

№4 作品名 「茶箱」 作者 井口 明夫

職種 家具製造 (井口木工所) 
受賞 平成6年度 京都府の現代の名工(京都府優秀技能者表彰受賞者)

№4 作品名 「茶箱」 作者 井口 明夫

茶箱(ちゃばこ)は、茶室でなくともどこでもお茶が飲めるように、小さめにあつらえた茶碗や茶巾筒、茶杓等の茶道具一式を組み込んで、持ち運びするための収納ケースです。

 吉野杉を使い、ホゾや継ぎ手などで木と木を組み合わせて作る「指物(さしもの)」の技法で製作しています。吉野杉は、主に奈良県中南部の吉野林業地帯(川上村、東吉野村、黒滝村等)が産地の杉です。密植と枝打ちをする事でわざと成長を遅らせ、年輪の幅を細かくさせることで、木目が細かく、節が少なくなるのが特徴です。

 この仕事は、木を加工して綺麗に組み上げる精度の高い技術が必要であることはもちろん、難しいとされるのは材料選びだそうです。切った木材でも乾燥の程度などにより、時間が経つにつれて生き物のように「動く」といいます。木の目(((まさ)(め))((いた)(め)))によっては、反り返ったり、伸び縮みしたりします。

さまざまな道具
神代欅から切り出した板

「木材は岐阜や大阪で仕入れることが多いです。現地で見て、動くかどうかを見極めるのが難しい。この仕事を50年以上していますが、見極めることができるようになったのはここ10年くらい。材木屋さんからも貴重なアドバイスをもらいながら木を選びます。国内はもちろん、外国からも買い付けにくるので、入札で手に入れます」

 山形県は鳥海山のふもとに太古の噴火で埋まっていた神代(しんだい)(けやき)を手に入れたそうです。こういった木は湿り方にムラがあったりして、掘り出してからどれくらい動くかがポイント。貴重な材はとりあえず手に入れてから、さて何に使うかと考えるのも楽しみだそうです。

№5 作品名 「(しゃち)」 作者 桶本 忠弘

職種 建築板金 (京都建装株式会社 相談役) 
受賞 昭和63年度 京都府の現代の名工(京都府優秀技能者表彰受賞者) 
平成11年度 現代の名工(厚生労働大臣表彰受賞者) 

№5 作品名 「(しゃち)」 作者 桶本 忠弘

 鯱(しゃち)とは、姿が魚で頭は虎、尾ひれは常に空を向き、背中には鋭いとげを幾重にも持つという想像上の動物で、建物が火事になった際には水を噴いて火を消してくれるという伝説があることから、守り神として城の天守等の屋根に飾られています。

 この作品は、平面の銅板を切って曲げ、はんだ付け等で組み合わせる「板金(ばんきん)」技法と、金槌で打ちながら立体的に成形する「鍛金(たんきん)」技法を用い、仕上げに金箔を張って作成しています。板金も鍛金も、同じ金属の塑性(変形する性質)を利用している技法ですが、職種は別々で、この2つの技術を思い通りに使いこなす桶本氏は、仕事面の建築板金職種の重鎮であるばかりでなく、京都工芸美術作家協会の会員としても高い評価を得ておられます。

銅工房の風景

建築板金で有名なのは、寺院などに見られる銅板葺きの屋根などですが、何十年も経て綺麗につく緑青(ろくしょう)を、あえて薬品でつけるという難しい技を求められることもあります。近年は排気ガスなどの影響で綺麗に緑青がつく前に傷んでしまう場合が多く、素材もステンレスに銅めっきを施した建材を使うことが多くなっています。

材質が変われば少しずつ技術も変わっていきます。実際の施工には加工された既製品を使う場面が多いそうですが、それだけではできない施工もあり、やはり伝統的な手法の板金技術はこれからも必要だと桶本氏は話します。

№6 作品名 「御茵(おとしね)赤倭錦(あかやまとにしき))」 作者 太田 保夫

職種 畳製作 (有限会社 太田畳店) 
受賞 平成22年度 京都府の現代の名工(京都府優秀技能者表彰受賞者)

№6 作品名 「御茵(おとしね)赤倭錦(あかやまとにしき))」 作者 太田 保夫

 

御茵(おしとね)は、綿入りの有職(ゆうそく)(たたみ)(古来、神社や寺院等で調度具として使われている畳)で、制作方法も昔ながらの伝統的な手順があり、畳表(ござ)を数枚重ね、鏡と呼ばれる中央部分には、綿を乗せ、額縁の四方には朱地の大和錦(朱倭錦)の中に綿を入れて作られています。元々、御茵は天皇や公家等の位の高い人だけが使える調度品でした。現在でも、場所や生地の選び方、大きさ、使われ方までを考えながら製作される敷物となります。

国内産の藺草(イグサ)にこだわった「京畳」の伝統技術を受け継ぐ畳の職人として、特に、美しい紋縁たたみを作り続け、これまで国産の材料にこだわり続けてきましたが、材料の提供元が次々と廃業していくなか、素材の変化に対応するとともに顧客の新しいニーズにも応えていくスタイルに変えたとのことです。寺社からの特別な要望や、一般家庭で使用できる置き畳など、有職畳製作の技能を駆使して新しい畳の用途の提案を行い、近年はイグサの代わりに和紙などを素材にした畳表も増えています。天然のイグサには、室内の空気を浄化する作用や経年変化で独特の風合いが出てくるなど、利点は多いと言います。材や製法にはこだわりを持ちつつも、時代の流れに柔軟に対応していく、そんな畳づくりを目指して今後もしっかりと取り組んでいきたいとのことです。

№7 作品名 「ファンシータキシード」 作者 齊藤 信幸

職種 洋服仕立 (高島屋 京都店 紳士服オーダーメードサロン) 
受賞 平成13年度 京都府の現代の名工(京都府優秀技能者表彰受賞者)
平成11年度 現代の名工(厚生労働大臣表彰受賞者)

№7 作品名 「ファンシータキシード」 作者 齊藤 信幸

タキシードは、男性用の礼服の一つで、基本的には夜間、宴席で着用されるものです。通常は、上着が黒や濃紺であるのに対して、ファンシータキシード(fancy tuxedo)は、上着が黒や濃紺以外の、カラフルで光沢のあるものが用いられ、柄は無地をはじめとして、マドラスチェックやタータンチェック、ペイズリー柄などで、黒のタキシードよりも略式の、準正装とされています。

 着る人の体型等に合わせて製図理論に基づく型紙補正を行うことで、美しさと動きやすさを兼ね備えたシルエットを作る高い技能により、おしゃれなお客様一人ひとりの好みを制作しておられますが、針を持った事さえ無かった修行のはじめには、ぞうきんを手縫いして、針の頭を指ぬきに当てる基本の動きから身に着けました。洋服仕立では製図が一番大切で、メジャーでの採寸は家でいうと設計図にあたるので、おろそかにしてはいけない事、反面、人間の身体は肥えたり痩せたりするが、オーダーは縫い代があるので調整がきき、父から息子へと引き継いで着てもらっている事もあると言います。また、流行をさじ加減してお客様自体のスタイルを作っておられ、街ですれ違っても、自分の作った洋服のラインで、自身の作品とわかるそうです。

 この作品は、第30回全日本注文紳士服技術コンクールにおいて、全国の技術者がその技術を競う中、上位入賞に輝いた表彰作品です。生地には、アンゴラやぎの毛と、ヒツジの毛の混紡で、合夏用の生地です。ラペルには、西陣織の着物生地を拝見のかわりに使用して、ファンシータキシードに仕上げています。両生地とも大変扱いにくい繊細な生地を使用されており、卓越した技術が駆使された綺麗な縫製と、華やかな生地から、きらびやかな雰囲気が漂います。

№8作品名 「ワーク落下防止治具 平行ピン圧入治具 小型磨き装置(ポータブル回転装置)」作者 篠原 滝太郎

職種 機械加工 (HILLTOP株式会社)
受賞 平成30年度 京都府の現代の名工(京都府優秀技能者表彰受賞者)

№8作品名 「ワーク落下防止治具 平行ピン圧入治具 小型磨き装置(ポータブル回転装置)」作者 篠原 滝太郎

 職種の分野は「機械加工、仕上げ」というもので、工作機械や切削工具を用いて材料を様々な形状に加工、さらに磨きをかけたりして精度の高い加工を施したり、部品を組み立てたりする技術です。今回はそのような技術を持った職人向けに、あったら便利というような治具(加工するための器具)や装置をつくりましたので、ご紹介します。

■ワ―ク落下防止冶具

《突っ切り加工の問題点》

パイプ形状の工作物を突切り加工する場合、切断のタイミングがつかめず、切り落とした瞬間に工作物が、回転している冶具に干渉して飛んでいく事故が発生することが後を絶たず大変危険でした。

その理由として左手で切削送りのハンドル操作を行うと同時に、右手で注油(冷却)とワ―クの保持を交互に行い切断するという3つのことを同時にしなければならないので、保持するタイミングが遅れると、工作物が飛んでしまっていました。このため、熟練者でも神経を使う危険な作業でした。

《改善》

専用治具を製作したことにより、ワークが飛ぶ危険はなくなり、左手のハンドル操作と注油(冷却)のみに集中することができ、切断間際の煩いが解消した結果、下図工作物で切断所要時間と加工時間の短縮にもつながりました。

図1使用した加工作業風景
図2

■平行ピン圧入治具

《平行ピン圧入作業の問題点》

従来は、適当な端材から平行ピンの突出高さに合わせた厚みの板材を探し出し、平行ピン径に合わせた穴を加工後、圧入作業という手順で毎回行っていましたが、端材を探す時間、加工時間等が非効率的であり、属人性を低減させるための工夫が必要でした。

《改善点》

厚み14mmまで対応でき、4種類のプレートに平行ピンの径寸法に対応する8種類の穴をあけた冶具を用意することで、96通りのサイズの組合せに即座に対応できます。

図3 工作物サンプル
平行ピン突出高さと径がそれぞれ異なる
図4 従来使用冶具加工の様子
ピンの突出高さと径に合わせて 端材で毎回製作
図5 従来使用冶具完成品
図6 従来冶具での平行ピン圧入の様子

■小型磨き装置(ポータブル回転装置)

《磨き作業の問題点》

機械加工後のわずかな打痕やバリ等、キズ等の状態にもよるが人がしなければならない作業として旋盤や手仕上げで全面磨いていました。手仕上げで仕上げをした場合、面にムラで出来る問題があった為、ポータブル回転装置を開発。

図7 縦向きに置いた磨き作業風景
図8 横向きに置いた磨き作業風景

《改善》

今までの磨き作業のあり方を見直し。今までの機械加工や組み立ての知識と経験を生かし、安全で、あらゆるワ―クに対応出来る装置を開発。縦横兼用で使用ができ、さらに軽量且つ卓上式。また、磨き作業は職人(旋盤工)が行っていましたが、これを利用する事により誰でも仕上げ作業ができるようになりました。

■補足

特筆すべきは、60才を超えてなお平成26年、27年、28年と各種特級資格を取得、平成27年には、ものづくりマイスターの認定を受け、その多岐にわたる資格知識を活かし現場作業のスペシャリストとして、斬新な観点から、製品品質・生産性・収益性の向上に寄与していることです。

また、第一線の監督指導者として、日々の技術、技能指導を始め多くの研修会を開催し、企業の垣根を越えてものづくりにおける若年技能者の技能向上、技能振興機運の醸成に貢献されています。

№9作品名 「七宝電気炉 ポストⅢ型」 作者 橘 仁郎

職種 電気工事 (木幡電気工業株式会社)
受賞 平成23年度 京都府の現代の名工(京都府優秀技能者表彰受賞者)

一般住宅向けの低圧電気工事から高圧電気設備の設置・保守管理等の電気工事業はもとより、自らの高い電気工事の技術を発展させて、工芸用電気炉の設計、製造、販売、設置まで、事業展開を図っておられます。

№9作品名 「七宝電気炉 ポストⅢ型」 作者 橘 仁郎

この作品は、手軽に七宝焼きを楽しみたいという方にぴったりの七宝炉です。焼成アミは一枚しか入りませんが、一枚のアミで1~4個焼成できます。七宝焼のほか、ガラス工芸でのいろいろな焼成加工の手法を、一般家庭用電源(100V、500W)で使用できます。このように、家庭用小型工芸用電気炉の開発についても、力を注いでおられるほか、本格的な電気陶芸窯を製造、設置、保守管理と一体的に行う等、電気工事業ならではのきめ細かいサービスを提供しておられます。

№10 作品名 「ストラクチャードヘアスタイル」作者 根津 英和

職種 理容 (HAIR SALON NEZU)

受賞 平成29年度 京都府の現代の名工(京都府優秀技能者表彰受賞者) 
令和 3年度 現代の名工(厚生労働大臣表彰受賞者) 

№10 作品名 「ストラクチャードヘアスタイル」作者 根津 英和

根津さんの家は大正時代から続く理容店で、4代目になります。平成28年には、「京の老舗」として表彰されました。これまで技能五輪の競技委員や全理連名誉中央講師を務めるほか、最近では、TOKYO2020オリンピック・パラリンピック選手村への派遣要請に応じ、約60数か国もの選手やコーチらのカットを担当されています。

「理容師は簡単になれるものだと思っていましたが、これが大間違いでした。理容学校の授業では、物理化学、解剖学、衛生学、衛生法規、消毒法など、かなりの勉強をしないといけません。また、仕事が出来るようになったら尚更、お客様のヘアスタイルや毛髪の癖、ダメージ等の悩みを聞くようになります。それを何とか解消しようと努力するようになります。これは、最新の技術のみではなくケミカルや心理学的な事も学ばなくては対応できず、色んな講習に参加させて戴きました。もちろん、新型コロナにおける感染症対策もしっかりとしないといけません、どのような事でも積み重ねが大切だと痛感しております」

 現在は、京都府理容生活衛生同業組合理事(教育部長)として、業界の技術向上に尽力されています。

№11作品名 「上和菓子 四季彩」 作者 將野 義雄

職種 生菓子製造(京菓子司 二葉軒)

受賞 平成17年度 京都府の現代の名工(京都府優秀技能者表彰受賞者)  
平成27年度 現代の名工(厚生労働大臣表彰受賞者) 

№11作品名 「上和菓子 四季彩」 作者 將野 義雄

お団子や草餅など、作ったその日のうちに食べるよう作られたものを「朝生菓子」と言いますが、作品に出しているのは「上生菓子」で、数日間はおいしくいただけるものです。お茶席に出されたり、婚礼などの祝い事や棟上げの際に贈られたりと、人生の節目を飾るのにも欠かせない生活文化のひとつとして発展してきました。今回は持ち前の技と工夫を活かして、四季の彩りを表現しています。

 「定番の同じものを作り続けるなら、一定期間練習すればできるようになります。ただ、上生菓子を人様に出すならば、技術だけではなく、職人としての勘やセンスといったものが必要なんだろうなと思います」

 もともと家業としての和菓子店を継ぐかどうかも考えないうちにアルバイトとしてある店に入ったのがきっかけだったそうですが、本格的にこの世界にのめり込んだのは、「工芸菓子」に魅せられてからのことだと言います。日本でも指折りの工芸菓子職人のもとに住み込みで修業に入り、その後様々な偶然も重なって、菓子界のオリンピックともいわれる全国菓子大博覧会に3回出場、平成29年の三重大会では功績を買われ審査員に選ばれることとなりました。

小学校での体験教室

「手の内は見せないというのが、この世界には多く見られますが、私には技術を残したいという気持ちが強くあります。だから若い人に教えてほしいと請われれば、できる限り教えたいと思います」
 近年は、子供たちにも和菓子を知ってもらおうと、体験教室に積極的に取り組んでおられます。

№12 作品名 「鏝絵(こてえ)」 作者 林 正信

職種 左官

受賞 平成14年度 京都府の現代の名工(京都府優秀技能者表彰受賞者) 
令和 3年度 現代の名工(厚生労働大臣表彰受賞者) 

№12 作品名 「鏝絵(こてえ)」 作者 林 正信

 (こて)()は、漆喰装飾の一技法で、左官が壁を塗るときに使うコテで絵を描いたものです。多くは動物や植物を題材として、コテをうまく使ってレリーフ状に造形していく芸術で、いろんな顔料を混ぜて色鮮やかに仕上げることもできます。

 左官の技術は主に建築技術として古くから使われるものですが、その範囲はとても広く、塀や外壁はもちろん、内装の天井、壁、キッチンや浴室など、あらゆる箇所にこの技術が使われます。また伝統的な工法としての土壁は、土をつくるところから始まり、竹下地を設えて幾工程にもわけて塗りながらつくります。なので、昔の家づくりは今と違いおよそ一年がかり。私は京都大学の耐震実験にも参加させていただいておりますが、土壁は粘り気があってしなやかに動きを吸収するため地震にも強いことで知られています。ただ、竹小舞で壁をつくる一般の家は、いまはほとんどありません。

家のほかに公園の滑り台や砂場、お店の土間なども手掛けます。林さんは石の研ぎ出しを得意としておられますが、割った硝子を練り込んで研ぎあげると星が散らばったような風合いになり、施主様にも喜ばれるそうです。各方面から信頼を受けて仕事をするというのは、なによりのやりがいに繋がるとのことです。

№13 作品名「防災瓦葺の納まり」作者 光本 大助

職種 かわらぶき(光本瓦店有限会社 代表取締役)

受賞 平成27年度 京都府の現代の名工(京都府優秀技能者表彰受賞者)
令和 2年度 現代の名工(厚生労働大臣表彰受賞者) 
令和 3年度 黄綬褒章

№13 作品名「防災瓦葺の納まり」作者 光本 大助

阪神・淡路大震災で瓦は落ちる、瓦屋根は重いといったイメージが先行してしまいました。当時、確かに古い家屋では屋根に重い土を載せたうえで瓦を葺くというものがあり、また瓦も固定されていないため、地震で瓦が落ちてしまう映像が取り上げられたりしました。昔の人に言わせれば、地震のときこそ瓦を落として屋根を軽くし、建物を守るのだという考えもあったようです。

 対策を迫られた業界では、そこかしこで、耐震施工のための試行錯誤が行われました。光本氏もその一人で、今でいう「ガイドライン工法」の確立に大きく貢献しました。光本氏は、従来からある具材で十分な耐震性、具体的には重力加速度3Gに耐えうる補強ができるかを検討しました。例えば、棟部(瓦屋根の頂上部分)の補強には、従来からある銅製の「ともえ釘」(巴瓦を固定する長い釘)を改良して冠瓦を固定、揺れるときには柔軟に揺れを吸収しながら止まれば元に戻るというのを実証実験により証明しました。今回の作品はミニチュアなものですが、逆さにしたり、引っ張ったりというのは実際の実験と同じ方法だそうです。ガイドライン工法は、震度7にも耐えうるほか、近年被害が増えつつある巨大台風でも瓦が飛ぶことのない施工技術として注目されています。

近年、瓦の需要は減少しつつあると言われますが、瓦屋根を施工する場合には、より美的なこだわりの強い要求に応えることも必要になってきています。古い寺社での葺き替えにおいては、経年による自然な風合いを維持することが求められたりします。光本氏が最近施工した事例では、武庫川女子大学の校舎に10色の瓦をバランスよく配置して仕上げた屋根があります。その厳しい要件に応えるべく、瓦の製造元とともに苦労したとのことですが、その出来映えは確かに素晴らしいの一言です。

№14作品名「越前和紙-京のサムライ」作者 山口 昌行

職種 内装仕上(株式会社 室内装飾ヤマグチ 代表)
受賞 平成26年度 京都府の現代の名工(京都府優秀技能者表彰受賞者)

№14作品名「越前和紙-京のサムライ」作者 山口 昌行

この作品は、舞い散る紅葉が漉き入れられた越前和紙と、たたずむサムライの絵姿が印刷された紙の二枚を重ね、壁装の袋貼り(廻りだけ糊をつけて仕上げる)技法により製作しています。また、バックライトを設け、背面の木枠で「京」の文字をあしらったシルエットがほんのりと浮かび上がるような演出がなされ、素敵なインテリア手法としての新たな提案を盛り込んだ作品となっています。

 「新しい試みと言っても、基本は伝統的な技術を使っています。二枚の紙を張り合わすことなく、あえて空間をつくって浮かし、さらに後ろから照らすより、微妙な陰影が入ります。苦心した点は、先ずアイデアを創出することでした。越前和紙には大きさに規格があるため、寸法の制約があり、デザインや配置、影の射し加減も想定しておかないと失敗してしまいます。全体のバランスをうまく取るのが特に腕の見せ所です」

壁紙を施工する様子(技能講習にて)

印刷業者と共同で取り組むことで、プリント技術も飛躍的に発展しています。それをさらに凹凸のある壁面に貼ることで立体的な印影がかもしだされ、より深みのある作品に仕上がるとのことです。

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